2014年05月25日

戦後のインフレと新円の登場

太平洋戦争によって日本経済は崩壊、終戦直後から極度の物資不足と物価高騰が襲ってきました。

■ インフレと輸入制限
敗戦直後の日本が直面した深刻な問題は、インフレーションでした。
戦争中は、政府による統制によって抑制されていたインフレが敗戦とともに現れ、異常な物価上昇が進んでいきました。

当時の卸売物価指数を見てみると、昭和20年を100としたとき、昭和22年には1375という信じられないほどの上昇をみたのでした。
戦時下、「ぜいたくは敵だ!」のスローガンのもと、極限まで消費を抑えられていた国民に、引き続き辛抱を強いるものでした。

【 インフレの原因 】
1.通貨量の増大
昭和20年〜23年にかけて通貨量は約3倍に増えていました。
軍需品への支払い、軍人への退職金支給などによる臨時軍事費支払の増大や日銀の民間貸出増加などが生じていました。
これらの政府債務は、占領軍の戦時保証債務打ち切りによって解消されることになりました。

しかし、政府は戦争時に引き続いて価格差補給金を企業に支給、食糧管理制度や国鉄の赤字などによって巨額の財政赤字を新たに発生させていたのでした。
日銀引受国債の発行と日銀対政府貸出によって埋め合わせられたため、財政赤字がそのまま民間への資金供給を増加させることになりました。

そこへ、およそ150万人もの引揚者が帰国、人口増加やインフレ期待によって換物運動が活発となったことでインフレを加速させることになったようです。

2.生産量の落ち込み
生産量の落ち込みも激しく、鉱工業生産指数から昭和11年を100とすると、昭和21年25、昭和23年41という有様でした。
生産量落ち込みの原因には、生産設備の破壊と輸入制限にあったようです。

生産設備は、戦時中の度重なる空爆によってほとんど破壊されていました。
また、敗戦と同時に軍の需要がなくなり、重化学工業設備が遊休化していたのでした。
供給不足の最大の原因は、輸入制限にあったと言われています。

占領当局は懲罰的な意図から日本の貿易を管理下に置き、輸入は必要最低限の生活必需品に限定し、輸出はその見返り品に限定させられていました。
製造業者は原材料不足にも悩まされたのでした。
昭和22年8月には民間貿易が再開されましたが、回復にはほど遠いものでした。

製造業者の原料不足以上に深刻であったのが、食糧不足でした。
都市住民たちは、農村部への買い出しやヤミ市によって辛うじて飢えをしのぐという有様でした。
日本政府の懇請によって、アメリカの食糧援助が昭和21年から始まりましたが、必要量をはるかに下回るものでした。

■ 鹿児島の様子
インフレの波は、一面焼け野原の鹿児島市にも容赦なく押し寄せてきました。
鹿児島市の電車料金は、終戦時10銭でしたが、昭和24年までに7回も値上げされ、7円にまでなっていました。
じつに、70倍もの値上がりでした。
目まぐるしい料金改定に、当局は乗車券の刷り直しや帳簿の書き換えで、大わらわであったそうです。

鉄道運賃も昭和21年3月、旅客で約2.5倍、貨物で約3倍の値上げが実施されるなど、インフレは深刻化するばかりでした。

■ 新しい円の登場
昭和21年2月16日、政府はインフレ対策のため、「金融緊急措置令」と「日本銀行券預入令」という金融統制を実施しました。
その概要を記すと、次のようになります。
1.銀行や郵便局など金融機関への預貯金は支払を停止して封鎖
2.流通中の10円以上の日銀券は3月2日限りで効力喪失
3.同時に10円以上の新円を発行、3月7日までに旧円と等価交換
4.1人100円の新円交換を行い、他の交換分は預金として封鎖
5.封鎖預金から生活資金としての支払いは、月額世帯主300円、世帯員一人100円

預金封鎖と新円交換の実施は、いくつかの珍現象を生みました。
少額貨幣を集めるブローカーが登場しました。
封鎖されない10銭、50銭、5円を手にするため、ブローカーたちは駅頭やヤミ市場などで「5円札一枚が10円と交換できるよ」と呼びかけました。

法の網の目を掻い潜る悪徳商人たちは、不正両替で多額の貨幣をかき集め、財産税逃れを図りました。
大蔵省でも脱税行為に目を光らせ、各金融機関も小額紙幣の払い出しを渋ったそうです。
食堂やデパート、駅の窓口でも10円以上の紙幣を敬遠するようになりました。
山形屋では、「つり銭のいらぬように」と貼り紙を出すほどであったそうです。

インフレ対策を講じましたが、悪性インフレは進行するばかりでした。
これまでコツコツ貯めてきた貯金も、インフレによって二束三文の価値しかありませんでした。
庶民の生活は、あまりにも苦しいものでありました。
posted by ぶらかご.com at 00:01| Comment(0) | 戦後の鹿児島市 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする