仁徳天皇がおわしました頃のことでございます。
即位されて4年目の春、天皇は高殿にのぼられ民の暮らしぶりをご覧になりました。
どの家からも、竈から煙が立たないのに気づかれました。
天皇は思いました。
人々は貧しさのため、竈に火を入れられないのでは。
天皇は人々が生活に苦しむ様子に、たいそう心配されました。
これより3年間、税を取らぬ詔を出されました。
天皇は民に負担を掛けぬよう、質素倹約に努めました。
そのため、宮殿の垣根は荒れ放題。茅の葺き替えもできず、雨漏りはいうにおよばず星の光を見るほどでした。
しばらくすると、民の暮らしぶりは明るさを取り戻してきました。
どこに行っても天皇の徳を讃えられ、家々の竈から煙が上るようになりました。
後に、天皇は思いを語られました。
「民が富んでこそ自らも富むのである」。
仁徳天皇は3年で民の暮らしを立て直したらしい。
現代の日本はどうか。失われた20年もしくは30年といわれる。
サプライサイドに立った経済政策のおかげで、家計部門はかなり痛んだ。
一時的に数万円を配ったところで、その効果は知れている。
家計部門をないがしろにしてきた政策の副作用が、現在の景気状況である。
そこに、円安や物価高も襲っている。
鹿児島県に住んでいると、車が必需品である。鹿児島市中心部にいると、公共交通が充実している。郊外にでると、一気に移動難民化する。
車が欠かせないため、ガソリン価格に対して敏感になる。
「油の一滴は 血の一滴」。
戦前・戦中の国策スローガンが胸に滲みる。
さて、明日は参議院議員選挙の投票日。
報道によると、かなり右寄りの政党が議席を伸ばしそうな予想である。
暮らしぶりが悪くなると、極端な考えに同調したくなるかもしれない。

戦時期日本の精神史 1931?1945 鶴見俊輔
哲学者の鶴見俊輔が、『戦時期日本の精神史』でこう述べる。
いまの日本を理解するために、その背景として1931年から45年までの、長い戦中の年月の日本を背景としておくことが大切であるように思います。
この指摘は、戦前・戦中期と戦後は、連続していると捉えられる。
敗戦を機に、日本人はすっかり変わったような印象を受ける。だが、内面はそう変わっていないのかもしれない。
■参考文献
『

歴代天皇総覧 増補版 皇位はどう継承されたか (中公新書) - 笠原英彦』笠原英彦・中央公論社・2021年
『戦時期日本の精神史1931〜1945年』鶴見俊輔・岩波書店・2015年

