おおかた、鹿児島大空襲をはじめ特攻、対馬丸など従来通りの報道だった。なかには、首を傾げたくなる内容もあった。
その理由を考えているところに、日本経済新聞に面白い記事があった。
「エビデンス教育早急に」2025年9月10日付である。
慶応大学名誉教授の今井むつみさんの論考である。先生は言う。
専門家が100%の確証がない状況であっても批判を恐れず、ベストを尽くして意見を述べることが大切です。重層的に検討して、現段階での蓋然性を示すようにする。
情報を受け取る側も心がけるべきことがあります。エビデンスの中身を考えることです。
安易な手法で集め、多角的で丁寧な検討もないデータをエビデンスだと信じてしまう。
論考を読み進めていると、鹿児島市の空襲に関する記述を思った。同市の空襲に関する記述は、本田斉氏「あれから十年」をベースにしている。同氏は、戦中に鹿児島市防空課長。おそらく、内容の検証をせずに『鹿児島市史』に掲載したと思われる。
肩書だけで信用したのだろう。内容を検証することなく、報道し続けるメディアも問題がある。
今井先生はつづける。
AIやSNSの時代です。「情報リテラシー」という授業だけでなく、小学生になれば、日頃からデータをどう読み解くのか、データの危うさなどについてしっかりと子供たちに伝える。「エビデンス教育」を早急に整えるべきです。大人も学ぶ機会が必要です。
せんだって、南日本新聞で曽於市にある小学校の記事を目にした。岩川航空基地に関する記述に目がとまった。
基地だと悟られないために昼間は滑走路に刈り草を敷いて牛を放牧し、移動式家屋や樹木を立てていたこと(以下省略)
どのような文脈で書いただろうか? 同航空基地は終戦まで米軍に知られなかったという意味だろうか。今井先生の言う「エビデンス教育」を考えるうえで頃合いの問いが立つ。
ひとつ目。
「岩川飛行場は終戦まで米軍に見つからなかった」という言説は、どういった記録を基にしているのか。
二つ目は、米軍資料を集めること。
岩川飛行場について、どのような記述があるか。「IWAKAWA AF」という言葉をみいだせるかもしれない。また、慶応大学の安藤先生の意見も合わせて考えみてはどうだろう。
米軍資料に目を通すと、1945年5月15日に岩川航空基地を認識している。滑走路の形、寸法、航空施設などに関する記述もある。
今井先生はこうも言われる。
SNSの影響で、我々の思い込みの塊は強まる傾向にあります。科学技術は発達しても、客観視して様々な視点から検討して本質をつかむ力は弱いままです。
複雑で答えがひとつでない問題に対し、経済優先のコスパやタイパに引きずられ、適切なプロセスを経て導き出されたエビデンスとは言えないデータや見解に安直に飛びついてしまいがちです。
じっくりと検討して物事を見極めて判断する大切さを置き去りにする傾向には、常にブレーキをかけなければいけません。
情報番組やマーケティングに関する情報に接していると、「バズる」「バエ」いった言葉を目にする。これらの言葉に、「至上の価値」を置いているようだ。
分からなくもない。それは、瞬間的な流行を追っている姿にしか見えない。
数日経てば、廃れる情報のような気がしている。情報の内容が、軽く薄くなっているのかもしれない。
■参考文献
「エビデンス教育早急に」2025年9月10日付日本経済新聞




